片道1,000キロ以上の長距離きっぷを買ってみた
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日本全国に多くの線路が敷かれている JR 線。最近では Suica や ICOCA などの IC カードで乗車することが多いですが、紙のきっぷを利用する場合、駅の自動改札機にきっぷを通して中へ入り、列車に乗って下車するときに再び自動改札機へときっぷを通せばそのきっぷは回収されてしまいます。
しかしながら、移動距離が長いきっぷになるときっぷの有効期間が 1 日ではなくなったり、ルートによっては途中下車をして改札の外で観光や宿泊ができたりします。今回は 片道 1,000 キロ以上のちょっぴり複雑なルートのきっぷを購入 し、それを使って旅行をしてみました。
今回購入したのは、秋田県の 角館駅 から大阪市内までの乗車券と、その道中に乗車する新幹線や特急列車の特急券です。角館駅は 秋田新幹線 の停車駅で、単純に移動するだけなら秋田新幹線で東京まで移動し、東京から東海道新幹線に乗車すれば一度の乗り換えで新大阪駅まで行くことができます。
世の中には列車に乗るためだけに様々な場所へ旅をする方もいるとは思いますが、今回の私の目的は初訪問となる秋田県と山形県の観光と、石川県の実家への帰省。立ち寄りたい場所へ行くことができるよう、以下の路線を経由する乗車券を購入しました。
- 秋田新幹線(田沢湖線・奥羽本線) - 角館 → 秋田
- 羽越本線 - 秋田 → 余目
- 陸羽西線 - 余目 → 新庄
- 山形新幹線 - 新庄 → 山形
- 奥羽本線 - 山形 → かみのやま温泉
- 東北新幹線 - かみのやま温泉 → 大宮
- 北陸新幹線 - 大宮 → 小松、小松 → 敦賀
- 特急サンダーバード(北陸本線・湖西線・東海道本線) - 敦賀 → 大阪
ざっくり旅程を説明すると、角館を観光(大阪から角館までは飛行機とバスで移動)し、秋田市内で 1 泊。翌日は日本海側をのんびり普通列車で山形県の新庄駅まで向かい、山形新幹線へ乗り換えて山形駅へ。山形市内を少し散策した後、かみのやま温泉の宿にて宿泊。
温泉で癒された翌日は温泉街を巡ったり蔵王方面を見て回ったり(これは天候に恵まれず行けませんでした)して、夕方に出発する山形・東北新幹線に乗車し、埼玉県の大宮駅で北陸新幹線へと乗り換えて実家の最寄り駅である石川県の小松駅へと移動。実家で数日過ごした後、北陸新幹線と特急サンダーバードを乗り継いで大阪へと帰る…という感じです。
行きたい場所や宿泊場所、秋田から山形へ向かう列車の本数の少なさなどを考慮した結果、このようなルートを選んだのですが、ルートを決めた後で「これは乗車する区間が重複していないから、乗車券を 1 枚にできるのでは?」と気付きました。
今回の複雑なルートを通るきっぷは、JR 東日本の えきねっと や JR 西日本の e5489(こちらはそもそも発着駅に東北の駅を選択できない)では購入することができず、駅の窓口へ行く必要がありました。きっぷを複数枚に分けることも考えたのですが、このような長い距離を移動することも滅多に無いだろうということでやってみることに。
改めて、地図で同じ区間を重複して乗車することにならないか確認し、鉄道に詳しい知人に「このルートなら乗車券を 1 枚にすることができるよね?」と聞き、鉄道に詳しくないながらも乗車する路線と乗り換えをする駅くらいは…と名前を覚え、窓口で伝える用のメモを用意し、利用者が多い駅なら窓口の方も経験豊富だろうということで JR 大阪駅の窓口へと足を運びました。
5 月 31 日に乗車する新幹線・特急列車がある関係で 5 月に入ってからでないときっぷの予約ができず、GW という大型連休中に大混雑しているであろう窓口へ行く羽目になり、朝 7 時前に家を出て訪れた JR 大阪駅。番号札を受け取って、10 分ほどの待ち時間で呼ばれ、15 分ほどかけてきっぷを用意していただきました。
新幹線や特急列車の特急券はいつものサイズのきっぷでしたが、乗車券は経由する路線が多いためか、普段きっぷを購入すると一緒に出てくるクレジットカードの利用明細の紙と同じ、細長いサイズとなっていました。この長いきっぷは「120 ミリ券」などと呼ばれているものなのだそう。初めて見たので、ちょっとわくわくです。
移動する距離も 1,300 キロを超え(乗換案内アプリ調べ)、乗車券の有効期間は 8 日間もあります。乗車券の有効期間は、きっぷのルール によると「営業キロ / 200 キロ + 1 日(小数点以下切り上げ)」だそうで、計算してみるとたしかに 8 日間になります。
きっぷを購入してから約 1 か月。なんやかんやあっていよいよ旅の始まりということで、やってきたのは秋田県の 角館駅 です。角館駅は紙のきっぷを通す自動改札機はなく、IC 専用改札のみ。しかも新幹線を IC カードで乗車する場合にのみ利用できるそうで、それ以外の乗車の場合は、列車が到着する前に開始される有人改札を通って駅のホームへと向かうようでした。
恐る恐る長いきっぷを提示し、入鋏済のハンコを押してもらって、まずは秋田新幹線に乗車します。秋田新幹線は岩手県の盛岡駅から秋田県の秋田駅までを結ぶミニ新幹線で、盛岡駅で東北新幹線の車両と連結することで秋田と東京を結んでいます。盛岡駅で東北新幹線と連結するためか、角館駅のホームに書かれている列車の号車番号は 11 号車から 17 号車と数字が大きくなっていました。
駅のアナウンスによると、秋田から盛岡の間は座席を指定しないきっぷが販売されているようで、空いている指定席に座ることができるのだそう。私は指定席特急券を持っていましたが、最近の SNS の影響もあって「自分が予約している席に誰かが座っていて、トラブルになるのではないか?」と少し不安でしたが、誰も座っていなくてひと安心。
乗車したのは水曜の昼過ぎでしたが、思ったよりも乗客は多めな印象。角館駅の次の駅である 大曲駅 からは列車の進む向きが逆向きになり、後ろ向きに走っていく新幹線というのがなんだか新鮮でした。一応手動で座席を回転させることはできるようでしたが、クルッと回転させる人は誰もいませんでした。
新幹線に揺られていると、あっという間に秋田新幹線の終点で、県庁所在地の駅ということで規模が大きな 秋田駅 に到着。今回のきっぷは自動改札機に投入することができないので、駅員さんがいらっしゃる改札へと向かいます。きっぷを手渡すと「秋田」と書かれたスタンプを押してもらえました。これは「下車印」というものなのだそう。
下車印のインクが全然乾かず、めちゃくちゃ擦れてしまってほとんど読めない状態になってしまったのが少し残念。鉄道好きの方の中には下車印を集めて周る方もいるそうですが、どうやってきっぷを保管しているのか気になります。
ホテルに宿泊して、翌日。ここからは、山形県を目指して普通列車の旅となります。距離的には大曲を経由して奥羽本線の列車で向かうのが近そうだったのですが、このルートの列車を調べてみると朝 5 時台の次は昼過ぎの 13 時台という感じだったので、比較的乗車しやすい時間帯に列車がある羽越本線・陸羽西線ルートを選択。このおかげで、1 枚の長い乗車券を買ってみるという体験ができたので、良かった…と思います。たぶん。
まず乗車したのは、庄内地方に位置する酒田市へと向かう酒田行きの普通列車。平日の朝ということで学生さんやスーツ姿の会社員の姿が多く、座席も結構埋まっていました。
利用者が少ないからなのか、各駅停車のはずなのに止まらない駅があったり、海沿いを走る路線ということで車窓からは綺麗な日本海の景色を見ることができたりと、発見と感動があって楽しかったです。走っている途中で何度も何度も警笛を鳴らしている気がしたのですが…野生動物対策とかなのでしょうか。
羽後本荘駅で多くの乗客が下車し、その先の 象潟駅 を過ぎると私が乗っていた車両にいる乗客は自分を含めて 4 人ほどになっていました。
列車は酒田駅に到着し、ここで庄内地方の中心都市である鶴岡市の鶴岡行きの普通列車に乗り換えます。乗り換える列車の出発時間まで 40 分ほどの空き時間があったので、駅周辺を散策してみたのですが、酒田駅の駅舎は非常に綺麗に整備されていたのが印象的でした。駅前にある観光案内所的な施設も、なんだかモダンな外観です。
駅の中にあった 清川屋 というお店で山形のお土産を購入し、酒田駅に停車していた秋田駅から乗ってきたものと同じ見た目の車両に乗り込んで 4 駅先の 余目駅 で下車。羽越本線を通るのはここまでで、ここからは陸羽西線という路線を通っていくことになります。
陸羽西線は、最上地方の中心都市である新庄市の 新庄駅 からこの 余目駅 までを結ぶ路線。トンネル工事の影響で長らく運休していた路線ですが、今年 2026 年 1 月に運転が再開しました。
列車は 1 両編成と、都会では考えられない短さ。車両は白と緑に塗られ、先頭には「奥の細道」の文字がありました。おくのほそ道といえば、江戸時代に活躍した有名な俳人・松尾芭蕉の紀行文。私の実家がある石川県小松市にも立ち寄っていて「むざんやな 甲の下の きりぎりす」という句が有名ですが、その旅の中で陸羽西線が通る最上川沿いを通ったのだそう。
「五月雨を 集めて早し 最上川」の句は、松尾芭蕉が詠んだ句の中でも非常に有名。そんな縁もあってか、この陸羽西線は「奥の細道最上川ライン」という愛称が付けられていました。
最上川沿いをゆっくり走る車内には意外と乗客が多く、窓から見える景色をカメラで撮影している人の姿がちらほら見られました。写真を撮っている人が多いことからも分かるように、川のすぐ隣を走る列車の車窓から見える景色は非常に綺麗なもの。
先述の松尾芭蕉の俳句などで最上川という川の名前は聞いたことがありましたが、実際に見るのはこれが初めてなので、なんだかテレビやインターネットでしか見たことのない有名人と初めて間近で遭遇したような、「本当に実在したんだ…」みたいな気持ちになって良かったです。最上川は実在します。
始発の余目駅を出発してからおよそ 50 分ほどで、終点の新庄駅に到着。新庄駅は山形新幹線の終点の駅となっていて、ここからはその山形新幹線に乗り換えて移動することになります。天候の影響を受けやすそうな日本海沿いを走る普通列車に乗車するということで、列車が遅れても大丈夫なように 2 時間半ほど時間を空けていたのですが、ここまで乗ってきた列車は全て定刻通り。
ありがたいことなのですが、かなり時間が空いてしまったので、近くのラーメン屋さんに立ち寄って昼食をいただきました。以前、X(旧 Twitter)で「大阪人は主張が強すぎるので東北の人を傷つけてしまう(意訳)」的な内容の投稿を見かけたこともあり、そーっと入って静かに食べていたのですが、食事中に雨が降り出したことをきっかけに、なんやかんやあって会話が弾んで楽しかったです。
同じ日本海側の石川県出身という話を出したのが良かったのかも。2(相手)対 1(私)の会話だったので、麺が伸びそうという心配はありましたが…。
昼食を食べ、駅の土産物店を見て回ったり、やたら気合の入った鉄道ジオラマの展示を鑑賞したりしつつ、改札を抜けて初めての山形新幹線の車内へ。山形新幹線は福島県の福島駅から山形県の県庁所在地である山形市の山形駅を経由してこの新庄駅までを結ぶミニ新幹線で、福島駅で東北新幹線の車両と連結することで山形・新庄と東京を結んでいます。
秋田新幹線と同様に、山形新幹線つばさ号は 11 号車から 17 号車という号車番号の数字が大きなものとなっていました。早めに列車へと乗り込んだので、最初は他の乗客が誰もいなかったのですが、徐々に人が増えてきました。定刻になり新庄駅を出発した後も、途中の駅で乗車する人が思っていたよりも多くて驚きました。
山形駅 で下車し、駅周辺を少し散策した後は宿を予約している かみのやま温泉駅 まで普通列車に乗って移動しました。夕方という時間帯もあって、駅のホームは学生さんでいっぱい。列車がホームへ入ってくる前から列に並んでいたので座席に座ることができましたが、立ち客が出るほどの大混雑。地方の列車は空いていると思われがちですが、その分車両の数が少ないので朝夕の時間帯はどこへ行っても人がいっぱいです。
かみのやま温泉で 1 泊した後、本当であれば蔵王・御釜エリアを見て回ろうと思っていたのですが、悪天候のため断念することになりました。天気予報が雨だったにも関わらず無事晴れてくれたところまではよかったのですが、代わりに強い風が吹き荒れており、現地の方も「普段はこんなに風が強いことはない」と風の強さに驚いているほどで、御釜へ向かうリフトが終日運休に。
代わりに山形市内を観光しようということで、大阪で購入した「角館→大阪市内」の長距離きっぷでは一度通った場所を通ることになってしまい利用できないため、普通に運賃を支払って山形駅へ。山形市内をうろうろとしてから再びかみのやま温泉駅へと戻ってきました。
人気だという「牛肉どまん中」という駅弁を山形駅で購入し、保冷剤を入手できなかったので急遽冷凍のペットボトルの水を購入して同じ袋へ入れて、山形・東北新幹線に乗って東北を離れます。大宮駅まで向かう間に駅弁をいただいたのですが、お肉たっぷりでとてもおいしかったです。
福島駅を出た後は大宮駅まで止まらないという超速達な列車に揺られること 2 時間半。山形・東北新幹線を下車して北陸新幹線へと乗り換えます。乗り換え先の北陸新幹線も停車駅が少ない「かがやき号」で、小松までの停車駅は長野・富山・金沢のみです。
乗車したのが金曜の夜だったので、出張帰りのサラリーマンから週末に観光地を巡るのであろう観光客まで多くのお客さんが乗っていて、ほぼ満席状態。発車時に流れる「北陸ロマン」や、長野を出た後のアナウンスで「JR おでかけネットまたは JR 西日本アプリ WESTER からご確認いただけます」が聞こえてきたことに「帰ってきた感」を感じつつ、多くの乗客を乗せた列車はあっという間に目的地へと到着しました。
実家に帰って東北旅行のお土産を渡しつつ、2 泊してから再び 小松駅 へ。長かった長距離きっぷでの移動も最終日ということで、なんだか感慨深い気持ちになりつつ、かっこいい外観の W7 系車両に乗り込み 敦賀駅 を目指します。帰省の度に乗っている列車・区間なので、特に目新しさはありませんでしたが、今回は自動改札機を通せないきっぷでの乗車ということで、敦賀駅に到着する直前には普段より早めに降りる準備を済ませて、乗り換え改札口へと向かいました。
結構ギリギリになるかと思っていたら、気合を入れすぎて乗り換え集団の先頭を突き進んでしまい、あまりにも余裕すぎる乗り換えで拍子抜けしたというエピソードを挟みつつ、今回の旅を締めくくる最後の列車は特急サンダーバード号。隣の席が空席だったこと、旅の最後ということで気が抜けてしまったのか、すっかり爆睡してしまい気がつけば京都まで来ていました。
日曜日の夕方、列車は大阪駅へと到着。角館から大阪までの 1,300 キロにも渡る大移動はこれで終了です。
片道 1,000 キロ以上の長距離きっぷを購入して旅をしてみましたが、普段なかなか見ることのない大きいサイズのきっぷを片手にあちこち巡るというのが、思っていたよりも楽しくて良かったです。途中で押してもらう下車印が徐々に増えていくのも、コレクション要素的なものがあって楽しめました。
今回のような長い距離を、区間の被りなく移動することはなかなかないですが、もしまた機会があればやってみたいと思いました。